心筋梗塞を起こした患者さん、無事に退院した後も再発予防、心不全の予防やコントロール、気を使わなければならないことがたくさんあります。
心筋梗塞後の患者さんは4つの薬が必須になります。ちゃんと全部入っていますか?
言わずもがな、抗血小板薬
言うまでもありませんが、ステント内血栓目的に必須なのが、抗血小板薬。カテーテル直後はバイアスピリン+プラビックス or エフィエントとなっていることが多いと思いますが、出血のリスクと虚血イベントのリスクを天秤にかけて1剤に減らすのは以前に述べたとおりです。
大出血のイベントがない限りは最低でも1剤は一生継続します。
ストロングスタチン LDL<70をキープ
心筋梗塞後の患者さんはPCIの翌日からストロングスタチンを高用量内服します。心筋梗塞を起こした直後はLDLが下がることも報告されているため、心筋梗塞入院時の採血でLDLがあまり高くなかったとしても、その値はあてになりません。スタチンの中でも必ずストロングスタチンを使用することが推奨されています。
一次予防の患者さんはリスクに応じてLDLの目標値が決まっていましたが、二次予防の患者さんはLDL<70を目標に管理します。一次予防の患者さんと混同して、LDL<100だからと言って減量してはなりません。ストロングスタチンを最大容量使用してもLDL<70が達成できいない場合は、エゼチミブを併用したり、PCSK9阻害薬を併用したりします。
一次予防の患者さんについてはこちら↓
β遮断薬
心不全のときと一緒で、β遮断薬は最大容量入れるようにします。高齢者は特に徐脈と血圧低下に注意が必要です。
ビソプロロールは0.625㎎錠から最大5㎎まで、カルベジロールは2.5㎎錠から最大20㎎までです。実際には患者さんの年齢によって考慮しますが、最小容量から始めて、脈拍数と血圧をモニターしながら3日くらいずつ徐々に増量していきます。
ビソプロロール、カルベジロールの大きな違いはβ1選択性があるかどうかです。ビソプロロールはβ1選択性があるため、気管支喘息やCOPDがある人にはビソプロロールを使用するようにしましょう。
そしてβ遮断薬のもう一つの注意点として、慢性的に投与しているときに急にやめてはならないということがあります。β遮断薬を慢性的に使用している人はup regulationでβ受容体が増加しており、離脱症候群(血圧の上昇、虚血症状の出現、不整脈の増悪)を来すことが知られています。急激な中止は避けましょう。
ACE阻害薬
こちらも心不全と同様、予後改善のエビデンスがある薬です。こちらも血圧や高K血症に注意しながら可能な限り継続します。
もし、これらの薬が入っていない心筋梗塞後の患者さんがいたら、「何か理由があるのかな?」と思うくらいに必須の薬です。心筋梗塞を一度発症すると一気に内服薬が増えてしまうので、コンプライアンスを確認することも重要です。