循環器内科医の本棚

循環器内科医による患者さん、一般内科医、研修医のためのブログ

血液サラサラの薬にまつわるQ & A

前回は血液サラサラの薬が何かをご紹介しました。

まだ読んでいない方はこちらから>>

今回は血液サラサラの薬にまつわるQ & Aと題して患者さんに実際に受けた質問をご紹介したいと思います。

Q1 私って血液サラサラの薬を飲んでいますか?

これは一番大事ですね。お薬が多い方は特に、自分が何の薬を飲んでいるかが把握できていない方がいらっしゃいます。けれど、血液サラサラを飲んでいるかどうかはとても大事です。歯科治療や内視鏡検査などの出血を伴う恐れがある処置の場合には数日前から血液サラサラの薬を休薬しなければならないことがあります。

f:id:drtottoco:20210312185438p:plain

表1 血液サラサラの薬

血液サラサラの薬、実は種類はそんなに多くありません。上の表の薬を飲んでいるかどうか確認しましょう。

Q2 血液サラサラの薬、体によさそうだから健康のために内服したいのですが?

血液サラサラの薬を飲んでいない患者さんからたまに言われます。血液ドロドロよりサラサラがいい!という感覚はわからないでもないですが、血液サラサラの薬は飲まないに越したことはありません。

理由1:出血のリスクがあるから。血を固まりにくくするわけですから、けがした時に血が止まりづらくなってしまいます。その他にも軽く頭をぶつけただけでも脳出血をしてしまったり、消化管出血(胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血など)のリスクが上がってしまいます。時に輸血を必要とするほど貧血になってしまう方もいらっしゃいます。

理由2:血液サラサラの薬を飲んでおくと、病気の予防ができるという証拠がないから。残念ながら血液サラサラの予防的な内服によって動脈硬化を抑える、脳梗塞や心筋梗塞を予防できるという科学的な証拠がないのです。

以上より血液サラサラが必要となる病気がない患者さんにとっては、血液サラサラの薬はデメリットのほうが大きいのです。どの薬もそうですが、すべての薬にはリスクが伴います。いらない薬は飲まないほうがよいでしょう。

Q3 歯の治療をします。血液サラサラの薬はどうしたらよいですか?

出血を伴う処置をする場合に血液サラサラの薬を一時的にやめるかどうかは循環器ガイドラインに定められています。休薬するかどうかは出血のリスクと血栓症のリスクを天秤にかけて判断します。歯科治療であれば出血のリスクは低い(例えばおなかの手術などと比べると、出血量は断然少ない)ため、血液サラサラの薬は継続のままで治療してくださいと歯科医の先生にお願いすることもあります。ただし、歯科治療でもかなり出血量が多い可能性がある場合などは休薬することもあり、ケースバイケースです。血液サラサラの薬を処方してもらっている先生と歯科の先生両方に相談しましょう。

Q4 血液サラサラの薬は一生飲まなければならないのですか?

血液サラサラの薬を飲むきっかけとなった病気によります。

脳梗塞を起こした場合、心筋梗塞を起こした場合には再発を防ぐため、ほぼ一生血液サラサラの薬を続けることが多いです。

心房細動の場合はカテーテルアブレーションで治療ができた場合は、やめることができる場合もあります。

深部静脈血栓症の場合は深部静脈血栓症の原因(飛行機に長時間乗っていた、手術後で寝たきりになっていたなど)がはっきりしており、その原因が除去できるときには、一生飲む必要はありません。ただ、同じ深部静脈血栓症でも遺伝的な原因があって血が固まりやすい方、再発してしまった場合などは飲み続けることがあります。

いずれの場合においても大きな出血(脳出血や消化管出血、輸血を必要とする貧血)を起こしてしまった場合には、血液サラサラの薬を中止せざるを得ません。

Q5  血液サラサラの薬を内服しています。気を付けることはありますか?

血液サラサラの薬を飲んでいる方は出血しやすいです。少しぶつけただけでもあざになってしまったり、少しのけがでも血が止まらなくなったりしてしまいます。そのため、転んだり、けがをしないよう注意しましょう。

血液サラサラの薬は血栓症の治療や予防のために飲んでいます。飲まなければ、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまった人は2回目を起こしてしまったり、心房細動がある人の場合は脳梗塞を発症してしまったりすることがあります。毎日確実に飲みましょう。

ワーファリンを飲んでいる方の場合は納豆などビタミンKを多く含む食品を食べると、ワーファリンの効果が弱まってしまうので、食べないようにしましょう。

最後に

2回にわたって血液サラサラの薬について説明してきました。いかがでしたでしょうか?

自分の病気や治療、飲んでいる薬について理解することは、自分の健康を守る上でとても大事なことです。今はインターネットでいろいろと調べることができますが、人によって病状は異なりますし、同じ病気でも他の合併症の有無によっては治療が異なる場合もあります。わからないことがあれば、主治医の先生に遠慮なく聞くようにしましょう。