循環器内科医の本棚

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アミロイドーシスを診断する

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アミロイドーシスってどういうイメージでしょうか?血液疾患?稀であり、自分は診ることのない疾患と思っていませんか?

アミロイドーシスは全身に症状を来す病気です。初期には非特異的な症状を来すため、なかなか診断されにくいのが現状です。しかし、今、疾患を診断することの重要性が高まっています。ビンダケル、オンパットロといったATTRアミロイドーシスに対する新しい薬が開発され、アミロイドーシスの予後が改善することが期待されているからです。

まずはアミロイドーシスを理解し、疑うことが、早期診断の第一歩です。

アミロイド蛋白の沈着が来す全身症状

アミロイドーシスはアミロイド蛋白という異常な蛋白が全身臓器に沈着することにより、症状を来す疾患です。

 

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アミロイドーシスの分類

沈着する蛋白の違いにより大きく下記に分けられます。診断は臓器に沈着したアミロイド蛋白を証明することが必要です。

・ALアミロイドーシス

 骨髄で産生される異常形質細胞から産生される免疫グロブリン由来のアミロイド蛋白が沈着します。疑ったら、免疫電気泳動、M蛋白、尿中・血中ベンスジョーンズ蛋白などの検査を行います。治療としては自家末梢血幹細胞移植、化学療法がありますが、アミロイドーシスの中では最も予後不良です。

・ATTRアミロイドーシス

本来、変異型ATTRアミロイドーシスは肝移植が唯一の治療であり、野生型ATTRアミロイドーシスは対症療法のみとされていました。しかし、先ほどの述べたように近年、新たな薬剤が開発され、予後改善が期待されています。

変異型ATTRアミロイドーシス:遺伝的に変異したトランスサイレチン(TTR)を前駆蛋白として異常蛋白が作られ凝集し、臓器に沈着します。前駆蛋白を安定化させる薬剤であるビンダケルや異常ATTRを合成するmRNAを阻害するオンパットロが開発され、現在使用されています。

  野生型ATTRアミロイドーシス:もともとは老人性アミロイドーシスと言われており、野生型TTRを前駆体として異常蛋白が合成され、臓器に沈着します。変異型と同様、ビンダケルが使用できるようになりました。

  透析アミロイドーシス:透析による合併症の一つでβ2ミクログロブリンが沈着することによりアミロイドーシスを来します。

・AAアミロイドーシス

 関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に伴う。炎症性蛋白の代謝物であるアミロイドA(AA)が臓器に沈着することで起こります。

 

心アミロイドーシス

全身の臓器に症状を来すアミロイドーシスですが、特に心臓への沈着は予後不良とされています。心臓にアミロイドが沈着することで心不全を来したり、刺激伝導系にアミロイドが沈着することで不整脈(徐脈性不整脈、心房細動など)を来したり、心突然死の報告もあります。

心アミロイドーシスを疑うのはこれらの症状を呈していることに加えて、著明な心肥大を伴っている患者さんです。心筋生検を行い、アミロイド蛋白を証明します。

まずは疑うことが重要!早期診断をして、早期治療に結び付けたいものです。