循環器内科医の本棚

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心不全患者さんの外来管理で気を付けること3つ

前回の記事では心不全においては利尿薬の併用が望ましいことをお伝えしました。

さて、心不全患者さんが入院治療を終え、無事退院することになりました。入院は総合病院で、外来はかかりつけの先生方に任されることも多いかもしれません。外来管理の際にはどのような点に気を付ければよいでしょうか。

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①増悪の兆候がないかチェック、息切れや浮腫、体重増加

かかりつけ医の先生にお願いしたい一番大切なことはこれです。心不全は治る病気ではなく、付き合っていく病気です。増悪、寛解を繰り返しながら長い時間をかけて徐々に悪化していきます。そしてその悪化に早く気づき、外来で対処できるレベルの時に食い止めることが重要です。

息切れはどうでしょうか?普段は大丈夫でも労作時、夜間寝るときの呼吸困難症状がないかを確認しましょう。

浮腫がないかどうか?元気なひとであれば下腿の浮腫が目立ちますが、寝たきりの患者さんの場合は背中や臀部に浮腫がないか確認してください。

そして退院して心不全が改善しているときの体重を知っておくことも大事です。そのときを最もよい状態として、どの程度体重が増加しているかをチェックしましょう。

まずは自覚症状ですが、BNP, NT-pro BNP、CXRでの胸水などの検査所見も総合して判断します。

もしどれかが悪くなっているようであれば対処が必要です。軽度の浮腫であれば利尿薬を追加する、治療に迷うようであればためらわずに入院していた病院に連絡してください。

②心不全薬の継続

心不全で一度入院すると、何剤も薬が追加になって帰ってきます。「薬減らせませんか?」という患者さんもいらっしゃることと思いますが、心不全の場合、特に心機能が低下しているHFrEFの場合、必要な薬が多いのです。

・利尿薬:併用になっている場合が多いと思います。心不全のコントロールで適宜増減して構いませんが、気を付けたいことが2つ。

①抗アルドステロン薬(スピロノラクトン、エプレレノン):これらは予後改善効果がると報告されています。利尿効果はいまいちな印象ですが、心不全は長期戦です。高K血症、腎機能増悪がない場合はできるだけ継続しましょう。

②トルバプタン:こちらは入院でないと導入できませんので、一度やめてしまうと再導入に入院が必要になってしまいます。7.5㎎錠を半錠でかまわないので、今後必要になるかもしれない場合は続けておくほうが無難です。ただし、ひどい脱水や高ナトリウム血症の場合はやめましょう。

・β遮断薬:絶対に継続!こちらも予後改善のエビデンスがあります。しかも最大容量まで増やしたほうがよいとされています。カルベジロールは20㎎まで、ビソプロロールは5㎎まで。低血圧、徐脈がある場合はやむを得ず減量しますが、少量でも入っている方がよいです。

・ACE阻害薬、ARB:こちらも絶対に継続!ACE阻害薬のほうがエビデンスがありますので、副作用で使えない場合以外はARBよりもACE阻害薬を優先します。CKDの患者さんにはKに注意して入れましょう。急性腎不全の場合は一度やめなければならないこともあります。

③生活指導

内服コンプライアンスはよいか?

塩分制限できているか?

これらができずに心不全増悪で救急外来に運ばれてくる患者さんがよくいらっしゃいます。外来のたびに家での様子を聞いて、患者さんにも心がけるようにしてもらいましょう。

 

心不全加療は長期戦ですので、外来加療がとても大事です。患者さんが健康に長生きできるように、適切に加療、アドバイスしていくことが必要です。

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