循環器内科医の本棚

循環器内科医による患者さん、一般内科医、研修医のためのブログ

肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の抗凝固療法

肺血栓塞栓症(PE)・深部静脈血栓症(DVT)の抗凝固療法についてまとめました。

PE/DVTの経口抗凝固薬

使用される薬剤は表のとおりです。DOACの中でもダビガトランはPE/DVTの適応がありません。

PE/DVTの経口抗凝固薬

初期にヘパリンを使用する場合

初期にヘパリンを使用する場合はAPTTをフォローしながら、下記の表を参考に用量調整を行います。

ヘパリンの用量調整表

ヘパリンから経口抗凝固薬に変更する場合

・ワルファリン:PT-INRが治療域に入った24時間後にヘパリンを終了

・DOAC:ヘパリンを終了してから内服

 

※本記事は「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に
関するガイドライン(2017年改訂版)」を参照して記載しました。

心不全のβ遮断薬

心不全に対してβ遮断薬は予後を改善する欠かせない薬剤です。

カルベジロール(アーチスト)、ビソプロロール(メインテート)の2剤が保険適応となっています。2剤の特徴をまとめました。

カルベジロールとビソプロロールの違い

カルベジロールとビソプロロールの使い分け

大切なのは①降圧効果 ②β1受容体選択性 ③代謝経路 です。

カルベジロールには筋小胞体からのCaリークの抑制作用があるとされており、ビソプロロールを使用する理由がない場合は、カルベジロールを使用するとよいでしょう。

使用するときの注意

両薬剤とも使用する場合は

・少量から開始し(カルベジロール1.25 mg or 2.5 mg、ビソプロロール0.625 mg or 1.25 mg) 脈拍、血圧の低下に注意する。

・許容できる場合は最大量まで段階的に増量する。

心不全は高齢者が多く、心機能低下している場合も少なくないため、血圧、脈拍に注意して少量から開始し、少量ずつ増量します。

今日の本

アミオダロンの使い方

アミオダロンはⅢ群抗不整脈薬に分類される、マルチチャネルブロッカーです。

適応は①VT/VF ②心不全を伴うAF に使用されます。

アミオダロン静脈注薬

1) VT/VFによる心肺停止

 まずはACLSが重要!ACLSのフローにしたがってアミオダロンを投与します。

 アミオダロンを投与する場合には

 初回投与:アミオダロン300㎎ ボーラス

 2回目以降:アミオダロン150㎎ ボーラス

 

2) 蘇生後のVT/VF、血行動態安定しているVT/VF、VT/VFの抑制

①→②→③の順で使用方法を切り替えます。

 ①急速投与 アミオダロン125㎎(5/6A)+5%ブドウ糖100ml 

      10分間で投与

 ②負荷投与 アミオダロン750㎎(5A)+5%ブドウ糖500ml

      33ml/h 6時間投与

 ③維持投与 アミオダロン750㎎(5A)+5%ブドウ糖500ml

      17ml/h 42時間投与

 

内服薬への切り替えが必要となる場合、維持投与中に内服を併用します。

内服薬は効果発現までに2週間ほど要します。

アミオダロン内服薬

・VT/VFで点滴静注からの切り替えを行う場合の例

400㎎ 分2(~2週間)

200㎎ 分2(2週間~)

・以降は定期的にTDMを行い、用量調整を行う

・副作用:甲状腺機能異常、間質性肺炎

・内服投与前の甲状腺機能(TSH, freeT3, freeT4), 間質性肺炎のマーカー(KL-6, SP-D)は必ずチェックし、数か月おきにフォローする。

・甲状腺機能低下の場合は、チラーヂンを内服しながら継続する場合もあります。

今日の本

「循環器治療ファイル」は初版が2002年で、現在3版となっています。なぜ、その薬を選ぶのか、使い方だけでなく考え方を学ぶことができるのでおすすめです。

「循環器薬の選び方と使い分け」はコンパクトにまとめてあり、とても読みやすいです。研修医、循環器レジデント、循環器を専門としない内科医にもおすすめです。

血液サラサラの薬にまつわるQ & A

前回は血液サラサラの薬が何かをご紹介しました。

まだ読んでいない方はこちらから>>

今回は血液サラサラの薬にまつわるQ & Aと題して患者さんに実際に受けた質問をご紹介したいと思います。

Q1 私って血液サラサラの薬を飲んでいますか?

これは一番大事ですね。お薬が多い方は特に、自分が何の薬を飲んでいるかが把握できていない方がいらっしゃいます。けれど、血液サラサラを飲んでいるかどうかはとても大事です。歯科治療や内視鏡検査などの出血を伴う恐れがある処置の場合には数日前から血液サラサラの薬を休薬しなければならないことがあります。

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表1 血液サラサラの薬

血液サラサラの薬、実は種類はそんなに多くありません。上の表の薬を飲んでいるかどうか確認しましょう。

Q2 血液サラサラの薬、体によさそうだから健康のために内服したいのですが?

血液サラサラの薬を飲んでいない患者さんからたまに言われます。血液ドロドロよりサラサラがいい!という感覚はわからないでもないですが、血液サラサラの薬は飲まないに越したことはありません。

理由1:出血のリスクがあるから。血を固まりにくくするわけですから、けがした時に血が止まりづらくなってしまいます。その他にも軽く頭をぶつけただけでも脳出血をしてしまったり、消化管出血(胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血など)のリスクが上がってしまいます。時に輸血を必要とするほど貧血になってしまう方もいらっしゃいます。

理由2:血液サラサラの薬を飲んでおくと、病気の予防ができるという証拠がないから。残念ながら血液サラサラの予防的な内服によって動脈硬化を抑える、脳梗塞や心筋梗塞を予防できるという科学的な証拠がないのです。

以上より血液サラサラが必要となる病気がない患者さんにとっては、血液サラサラの薬はデメリットのほうが大きいのです。どの薬もそうですが、すべての薬にはリスクが伴います。いらない薬は飲まないほうがよいでしょう。

Q3 歯の治療をします。血液サラサラの薬はどうしたらよいですか?

出血を伴う処置をする場合に血液サラサラの薬を一時的にやめるかどうかは循環器ガイドラインに定められています。休薬するかどうかは出血のリスクと血栓症のリスクを天秤にかけて判断します。歯科治療であれば出血のリスクは低い(例えばおなかの手術などと比べると、出血量は断然少ない)ため、血液サラサラの薬は継続のままで治療してくださいと歯科医の先生にお願いすることもあります。ただし、歯科治療でもかなり出血量が多い可能性がある場合などは休薬することもあり、ケースバイケースです。血液サラサラの薬を処方してもらっている先生と歯科の先生両方に相談しましょう。

Q4 血液サラサラの薬は一生飲まなければならないのですか?

血液サラサラの薬を飲むきっかけとなった病気によります。

脳梗塞を起こした場合、心筋梗塞を起こした場合には再発を防ぐため、ほぼ一生血液サラサラの薬を続けることが多いです。

心房細動の場合はカテーテルアブレーションで治療ができた場合は、やめることができる場合もあります。

深部静脈血栓症の場合は深部静脈血栓症の原因(飛行機に長時間乗っていた、手術後で寝たきりになっていたなど)がはっきりしており、その原因が除去できるときには、一生飲む必要はありません。ただ、同じ深部静脈血栓症でも遺伝的な原因があって血が固まりやすい方、再発してしまった場合などは飲み続けることがあります。

いずれの場合においても大きな出血(脳出血や消化管出血、輸血を必要とする貧血)を起こしてしまった場合には、血液サラサラの薬を中止せざるを得ません。

Q5  血液サラサラの薬を内服しています。気を付けることはありますか?

血液サラサラの薬を飲んでいる方は出血しやすいです。少しぶつけただけでもあざになってしまったり、少しのけがでも血が止まらなくなったりしてしまいます。そのため、転んだり、けがをしないよう注意しましょう。

血液サラサラの薬は血栓症の治療や予防のために飲んでいます。飲まなければ、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまった人は2回目を起こしてしまったり、心房細動がある人の場合は脳梗塞を発症してしまったりすることがあります。毎日確実に飲みましょう。

ワーファリンを飲んでいる方の場合は納豆などビタミンKを多く含む食品を食べると、ワーファリンの効果が弱まってしまうので、食べないようにしましょう。

最後に

2回にわたって血液サラサラの薬について説明してきました。いかがでしたでしょうか?

自分の病気や治療、飲んでいる薬について理解することは、自分の健康を守る上でとても大事なことです。今はインターネットでいろいろと調べることができますが、人によって病状は異なりますし、同じ病気でも他の合併症の有無によっては治療が異なる場合もあります。わからないことがあれば、主治医の先生に遠慮なく聞くようにしましょう。

患者さんのための 血液サラサラの薬の基礎知識

「血液サラサラの薬」ってよく聞くと思います。
採血のとき、歯の治療をするとき、胃カメラや大腸カメラ、手術を受けるとき、「血液サラサラの薬を飲んでいますか?」必ず聞かれますよね。
「血液サラサラの薬」って何でしょうか?

 体の中の大事な仕組み 止血

転んでけがして血が出ても、抑えてしばらくしていると血は止まって、自然と傷は治っていきますよね。血がいつまでも止まらないと、血が出続けて体の中の血がなくなってしまいます。血を止めることを「止血」と言いますが、この体のなかに自然に備わった止血の仕組みが生きていく上ではとても大事です。
けれど、血管のなかで止血されては困ります。血管の中で血が固まってしまうと、血の塊「血栓」ができてしまいます。血栓ができて血管に詰まると、臓器に酸素が行き渡らず、いろいろな病気を来します。心臓の血管である冠動脈に血栓が詰まってしまった場合は心筋梗塞、脳の血管に血栓が詰まってしまった場合は脳梗塞と呼ばれ、怖い病気の代表選手です。
つまり、出血した場合には止血、血管の中では血液はサラサラであってほしいのです。体の中には止血の仕組み、血液をサラサラにする仕組みの両方があり、バランスをとっているのです。血管の外では止血効果がメイン、血管の中では血液サラサラ効果がメインに働いています。このバランスが重要なのです。

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止血と血液サラサラのバランス

止血の仕組みには2種類ある 血小板と凝固因子

止血の仕組みには血小板と凝固因子という二つがあります。
血小板はみなさん聞いたことがあると思います。血液には主に赤血球、白血球、血小板があり、血小板はとても小さな血球です。ケガをしたときに、ケガをした部分に血小板が集まり、くっついて血を止める働きをしてくれます。
凝固因子というのは血液を固まらせるたんぱく質です。凝固因子には複数の種類があり、血小板とは別の方法で血を止めるのに役立ちます。

 

血液サラサラの薬も2種類ある

血液サラサラの薬はこの止血の仕組みを抑える働きをして、結果的に血液をサラサラに(血を固まりにくく)します。止血の仕組みには血小板、凝固因子の2種類があるので、血液サラサラの薬にも2種類あります。血小板の働きを抑える薬と凝固因子の働きを抑える薬です。そして病気によって使い分けがなされます。

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抗血小板薬、抗凝固薬の効果
抗血小板薬

血小板の働きを抑える薬は「抗血小板薬」と呼ばれ、下記のような種類があります。
・バイアスピリン(アスピリン)
・エフィエント(プラスグレル)
・プラビックス(クロピドグレル)
・プレタール(シロスタゾール)
動脈の血栓症を起こしたことがある患者さんに使われます。例えば脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、人工弁術後、閉塞性動脈硬化症などがあります。

抗凝固薬

凝固因子の働きを抑える薬は「抗凝固薬」といい、代表選手はワルファリンです。
静脈の血栓症を起こしたことがある患者さんや静脈血栓症のリスクが高い患者さんに使われます。具体的な病気は脳梗塞、心房細動(脳梗塞の原因となることがあるので、脳梗塞の予防目的に内服する)、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などです。
「ワルファリンを飲んでいると納豆が食べられない」というのを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。ワルファリンは凝固因子の働きを抑える薬なのですが、納豆に含まれるビタミンKがその効果を邪魔してしまい、薬の効果を減弱してしまうのです。そのため、ワルファリンを内服している方は納豆を控えるように言われるのです。また、抗生剤や抗不整脈薬との相互作用によってワルファリンの効きが悪くなったり、よくなりすぎたりしてしまうので、ワルファリンを飲んでいる場合は他の薬との飲み合わせにも注意を必要とします。肝臓や腎臓の機能によっても効きが変わってきてしまうので、ワルファリン内服中は定期的に採血を行って「PT-INR」というワルファリンの効きの指標になる値を確認し、用量を調整する必要があります。
昔からある薬で安い薬なのですが、食事制限や他の薬との飲み合わせで効果が変動するため、やや使いづらい一面があります。そこで、新しい抗凝固薬が4種類出てきました。
・リクシアナ(エドキサバン)
・イグザレルト(リバーロキサバン)
・プラザキサ(ダビガトラン)
・エリキュース(アピキサバン)
これらは比較的新しい薬で食事制限の必要はありません。他の薬との相互作用は全くないわけではありませんが、ワルファリンほど気にする必要はありません。

表にまとめると下のようになります。

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抗血小板薬と抗凝固薬の特徴


血液サラサラの薬の副作用

副作用はズバリ出血です!止血効果を弱めるので、反対に出血しやすくなってしまいます。ケガしたときに血が止まりづらい、鼻血が止まりづらい、軽くぶつけただけなのにあざができやすい、これは血液サラサラを飲んでいる患者さんは誰もが経験があるのではないでしょうか。このような軽度な出血ならよいのですが、脳出血や消化管出血というような命にかかわる病気のリスクも上がってしまいます。
そのため、リスクとベネフィットを天秤にかけて薬を使う必要があります。

まとめ

血液サラサラの薬は体の中の止血の仕組みを抑える働きを持つ薬で、抗血小板薬、抗凝固薬の2種類がある。
次回は「血液サラサラの薬にまつわるQ & A」というテーマで書いていきたいと思います。

 

患者さんのための パルスオキシメーター

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コロナですっかり一般の方々にもなじみとなった、パルスオキシメーター(酸素飽和度測定器)。

何がわかるの?どのような仕組み?使うときに注意することはあるの?

これらの疑問に答えていきます。


 

パルスオキシメーターで何がわかるの?

パルスオキシメーターは血液の酸素の状態を見ています。使い方は簡単、指に挟むだけです。SpO2(酸素飽和度)とHR(脈拍数)が数値で出ます。SpO2は酸素飽和度といって血液の中の酸素の状態を見ています。正常値は通常SpO2 96%-100%と言われます。

これが下がってしまう病気としては肺疾患(肺炎、慢性閉塞性肺疾患、重症喘息、間質性肺炎など)や心不全、肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)などがあります。

新型コロナウイルス肺炎などの肺炎は軽症の場合はSpO2は下がりませんが、中等症以上になるとSpO2が下がってきます。SpO2が低下してしまうと酸素吸入が必要となるので、入院の適応となります。そのため、自宅療養中のコロナウイルス感染症の患者さんにパルスオキシメーターが貸し出されて、重症化しないかをモニタリングしているのです。

どのような仕組み?

血液中の酸素は赤血球の中のヘモグロビンと結びついて全身へ運ばれていきます。血液はヘモグロビンと酸素が結びついているときは血液は鮮やかな赤色、酸素が少ないときは黒っぽい色になります。この色の違いを利用して、血液中の酸素の状態をみています。

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パルスオキシメーターの仕組み

指を挟んだパルスオキシメーターの上側から赤い光が出ます。その光が指を通って一部吸収されます。残った光の量を下側で測定します。酸素の多い赤い血液は光を通しやすいので、通過する光の量が多くなります。反対に酸素の少ない血液は赤黒く、光を吸収しやすいので、通過する光の量は少なくなります。

こうしてSpO2が算出されます。

うまく測定できないとき

・血圧低くて指先まで十分に血流が届いていない場合

・指先が冷たくて指先の血管が収縮している場合

・黒や青のマニュキアを塗っている場合(赤い光が届きません)

他の指に変えたり、足の指で測定することもできます。

パルスオキシメーターには波形が表示されるものがあるので、それを指標にしてもよいでしょう。しっかり上下の波が表示されている場合は、適切に測れているとき、平坦な波の場合は適切に測れておらず、値の正確性は低くなります。

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どのパルスオキシメーターがいい?必要な人は?

パルスオキシメーターの価格帯は幅広いですが、安いものでも問題なく値が測定できますので、家庭用では高いものを選ぶ必要はないでしょう。

脈波の波形が表示されているものであれば、その値が適切か判断しやすいので、参考になります。

肺疾患がある方、慢性心不全のある方は自宅に持っておくと自身で増悪を早く見つけることができるので便利です。「息苦しい」と感じたら測定するようにしましょう。コロナの自宅療養中の方も増悪の可能性があるので、毎日チェックしておくことが望ましいです。とくに高齢者の場合は、酸素飽和度が下がっていても息苦しいと感じない場合があります。

適切に使って健康管理に役立てましょう。


 


 

   

患者さんのための 心臓の基礎知識

今日は心臓について解説していきます。

心臓を外から見た!心臓のポンプ機能

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心臓の外側

心臓の第一の役割は全身に血液を送り出すポンプの機能を果たすことです。

心臓から送り出された血液は大動脈を通って全身をめぐり、臓器や筋肉に酸素を与えて使われた血液が上大静脈、下大静脈から心臓に返ってきます。返ってきた血液は肺できれいにされて(酸素を与えられて)、左右の肺静脈を通ってまた心臓に入り、大動脈から送り出されるということを繰り返しています。

心臓(左心室)大動脈臓器や筋肉上大静脈・下大静脈心臓(右心房右心室)肺動脈肺静脈心臓(左心房)初めに戻る

肺できれいにされた(酸素をいっぱい含んでいる)血液が流れるところを赤、臓器や筋肉で使われた(酸素が少ない)血液が流れるところを青で示しています。

さて、心臓は全身に血液を送り出していますが、心臓自身はどうしているのでしょう?

心臓は筋肉、冠動脈から栄養をもらう

上の図の心臓の表面に細い血管が描かれています。これが冠動脈といって心臓を栄養する血管です。大動脈の根本から冠動脈が枝分かれしてこれが心臓に酸素を送っているわけです。心臓は心筋という特殊な筋肉でできています。筋肉であるので、収縮したり拡張したりしてポンプの機能を果たせるのです。

この冠動脈が詰まってしまうと心筋に栄養がいきわたらず、心臓の筋肉が死んでしまいます。心臓は全身の中でもとりわけ酸素を必要とする臓器なので、血流が途絶えてしまうとすぐ死んでしまうのです。これが心筋梗塞や狭心症という病気です。

心臓を中から見た!心臓を動かす仕組み

 

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心臓の内側

大事なポンプの機能を持っている心臓。心臓が止まってしまうと、全身に血液を送り出せなくなってしまい、死んでしまいます。そのため、心臓は無休で働き続ける仕組みがなくてはなりません。それをつかさどっているのがペースメーカー細胞という特殊な細胞です。

上の図の洞結節、房室結節というところはペースメーカー細胞でできていて、とっても働き者です。何の命令がなくても自らずーっと働き続けています。中でも一番働き者なのが洞結節。洞結節の命令により、心臓の収縮がスタートします。図の赤矢印は命令が伝わる順番を示しています。血液の流れではないので注意してください。命令は洞結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚というように命令が伝わり、全身の心筋が動くという仕組みです。洞結節が社長、房室結節が部長、ヒス束が課長、右脚・左脚が平社員ってところでしょうか。上からの命令がどんどん下に伝わります。社長が一番働き者、できた会社ですね。

この命令が伝わる仕組み(上の図の赤い矢印)は電気回路によく例えられます。

この電気回路の異常が不整脈です。

心臓は全身の中でも特殊で大事な臓器です。病気のお話はこれらの基礎知識を踏まえて、また書いていこうと思います。