循環器内科医の本棚

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こんなときどうする?Brugada心電図

「健診でBrugada心電図 Type2を認めて受診されました。既往歴、失神歴、家族歴などなく、リスクは低そうです。どうしたらよいでしょう?」

Brugada心電図、健診でよく引っかかってくる若年~中年の男性は多いのではないでしょうか?Brugadaの中にも心室性不整脈のリスクが高い人、ほぼない人がいます。重要なポイントは正しくリスク評価を行い、high riskの人を見逃さないことです。

Brugada 心電図のタイプ タイプ1心電図があるか?

Brugada ECGはタイプ1-3に分類されています。タイプ1がみられるかがリスク分類の第1歩です。V1~ V3誘導の J点が2 mm(0.2 mV)以上を示すST上昇を3つのタイプに
分類し、

タイプ1:coved型ST上昇と陰性T波

タイプ2:saddle-back型ST上昇でSTの終末部(トラフ)が1 mm以上

タイプ3:coved型あるいはsaddle-back型を示し,STの終末部が1 mm未満

タイプ1と非タイプ1でリスクが異なります。つまり典型的なcovedが見られたらリスクが上がります。V1-3に関しては1肋間上、2肋間上の心電図も記録し、covedがみられないかをチェックしましょう。肋間上で見られたcovedもれっきとしたcovedです。coved型心電図があるだけでhigh riskとは限りませんが、専門の医療機関に一度送って、リスク評価をしてもらうとよいでしょう。

Brugada症候群の診断基準

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遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(日本循環器学会)

有症候性BrS:心電図所見1項目と主所見臨床歴2-A ~2-Dの1項目を満たす場合.
無症候性BrS:心電図所見1項目のみで主所見臨床歴がない場合.
無症候性BrSの場合,副所見3-A(臨床歴),3-B ~3-D(家族歴),3-E(SCN5A変異)はリスク評価の際の参考とする.
非タイプ1(タイプ2あるいはタイプ3)心電図のみの場合はBrSとは診断されないが,時間経過とともにタイプ1心電図が出現する可能性もあるので,経過観察(特に主所見出現時の受診)は必要である.

ガイドラインからの抜粋です(JCS2017_aonuma_h.pdf (j-circ.or.jp) )。

リスクがあるかもしれない非タイプ1心電図

非タイプ1心電図のみの場合はBrugada症候群とは言われません。そうであれば、非タイプ1はBrugadaとして扱わなくてよいの?

答えはNoです。

厄介なことにBrugada心電図には日内変動、日差変動があります。発熱時や副交感神経優位(運動後など)にcovedが見られやすいなど誘発条件もあります。そのため、受診時にたまたまタイプ1がみられていないだけの可能性があります。よって経過観察をしていく必要があります。タイプ2でも診断基準の主所見、副所見にあてはまるものがあれば、一度専門の医療機関受診をおすすめします。

まとめ

・タイプ1心電図がみられる人

・非タイプ1心電図であるが、診断基準の主所見、副所見がある人

これらの患者さんは専門の医療機関で詳しい検査でリスク評価が必要です。

ではそれ以外の人は?ガイドラインでも慎重な経過観察となっていますが、具体的には書かれていません。複数回の心電図のフォローアップは必要かと思います。期間をあけて肋間上を含めた心電図を記録する。翌年の健診も必ず受けてもらう。本人にBrugada症候群の可能性を伝え、失神や動悸症状が出るようであれば必ず受診して頂くことを説明する。エコーがすぐできる施設であれば、エコー(+トレッドミル 低侵襲なので)は一度やってもよいかもしれません。