循環器内科医の本棚

循環器内科医による患者さん、一般内科医、研修医のためのブログ

心房細動アブレーション どんな患者さんが適応?

心房細動の治療は

①抗凝固療法 ②リズムコントロールまたはレートコントロール

この2点に集約されます。

 

リズムコントロール VS レートコントロール

AFFIRM試験という有名な試験ではAFのリズムコントロールとレートコントロールには差がないことが示されました。

それじゃあわざわざ入院してカテーテルしなくても、薬でいいんじゃない?

カテーテルアブレーションのメリットは何でしょうか?

カテーテルアブレーションのメリット

①洞調律にできること(発作性の場合は発作を抑えることができること)

②抗不整脈薬を使用せずに済むこと

③場合によっては抗凝固療法も終了できること

カテーテルアブレーションがおすすめな患者さん

カテーテルアブレーションの適応は日本循環器学会ガイドラインでは下のようになっています。

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不整脈非薬物治療ガイドライン(日本循環器学会)

AF 合併心不全患者の予後に与える影響をカテーテルアブレーションと薬物治療(レートまたはリズムコントロール)で比較したCASTLE-AF 試験ではカテーテルアブレーション群では再発が比較的多かったにもかかわらず、全死亡および心臓死が薬物治療群の約半分であり、有意な予後改善効果が示されており、上記の推奨度となっています。

このガイドラインを踏まえて、個人的に薬物治療よりもカテーテルアブレーションがおすすめの患者さんは

・発作性心房細動で発作時の動悸症状が強い場合

・発作性心房細動で薬剤抵抗性の場合、抗不整脈による副作用が出た場合

・若年の場合

・心不全を合併している場合

・徐脈頻脈症候群の場合(心房細動が停止して洞調律に戻る際に長い洞停止で失神症状を来すとき)

・抗凝固療法をやめたいという希望がある場合(CHADS2 scoreが高すぎると、アブレーション後もやめられない場合があります)

あまりおすすめでない(薬物療法の方がいい)患者さん

・高齢でADLが悪い場合(合併症のリスクが高い)

・持続性心房細動で左房が高度に拡大している場合、心房細動の持続時間が長い場合(症状がないことが多く、治療成績が劣るため)

症例ごとに個別に判断

上記を踏まえて、最終的には患者さんの状態や希望に応じて個別に判断することとなります。ガイドラインにも①症状 ②年齢 ③進行度 を考慮して決めることとなっています。

カテーテルとは言え、侵襲とリスクがある治療ではあるので、より恩恵を受けられる患者さんを適切にselectionすることが重要だと思います。そして、メリットが大きいと思われる患者さんにはアブレーションの選択肢早めに提示しましょう。

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