循環器内科医の本棚

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抗凝固薬の使い分け

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心房細動に対する抗凝固薬、どれがいいですか?

とよく聞かれるのですが、エビデンスとしてDOAC4種類はどれも大差がありません。そのため、ガイドラインでも「この薬がとくによい!」というものはなく、「抗凝固薬」としてひとまとめに扱われています。どれでもいいというのが正直なところですが、私個人の使い方を書きたいと思います。

4種類のDOAC

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日本循環器学会 不整脈薬物治療ガイドライン

商品名は

ダビガトラン→プラザキサ

リバーロキサバン→イグザレルト

アピキサバン→エリキュース

エドキサバン→リクシアナ

抗凝固薬は飲み忘れなく、しっかり内服してもらうことが重要です。そのため、新規に導入する場合、他に内服している薬がない場合は内服コンプライアンスを考慮して、1日1回内服でよいイグザレルト、リクシアナを選択しています。

ただし、イグザレルトは出血のイベントが少し他より多いとの報告もあるため、高齢者や出血リスクの高い患者さんの場合は避けるようにしています。

プラザキサはプリズバインドという拮抗薬があります。そのため、今後手術を予定している患者さんや出血のリスクが高いと思われる患者さんにはプラザキサを選択するのもよいでしょう。ただし、他のDOACがCCr<15で禁忌となっている中で、唯一CCr<30で禁忌となってしまうので、腎機能障害には注意が必要です。

少し専門的な話になりますが、アブレーションの当日は抗凝固薬を中止することが多いのですが(施設により周術期の抗凝固薬投与は異なります)、プラザキサはアブレーション当日も比較的安全に継続投与できるということから、アブレーション直前にも抗凝固薬をしっかり飲ませておきたいな、と思う患者さん(具体的には持続性心房細動や左心耳血栓の既往がある人)には積極的に選択することも多いです。ただし、プラザキサが他の薬に比べて血栓が少ないという報告はありません。あくまでもアブレーション前も休薬したくないな、という感覚です。もちろん、アブレーションをする際にはCTや経食道心エコーで血栓がないことを確認してから、手術を行います。

まとめ

私の個人的な使い方としては

1日1回内服にしたい→イグザレルト、リクシアナ

消化管出血の既往がある→イグザレルト以外

手術の予定がある、出血リスク高い→プラザキサ

アブレーション前にしっかり血栓を溶かしたい気がする→プラザキサ

繰り返しになりますが、4種類に優劣はありませんので、どれでもOKというのが実際です。