循環器内科医の本棚

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CS1心不全 救急外来での対応の実際

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救急外来にCS1心不全の患者さんがやってきたら?

75歳男性。数日前から労作時の息切れを自覚していました。今日の夜に急に苦しくなっていてもたってもいられなくなり、救急車を呼び、搬送されてきました。

さて、どうしますか?

※参考までに薬剤の容量も記載しています。一例なので状況に応じて適宜増減して使ってください。

 

 

まず診断をつけよう

まずはバイタルをとって、血行動態を把握し、トリアージします。

BP 180/115、HR 110、SpO2 85% (RA)

酸素投与を開始します。この時点で入院を念頭に治療を進めていくので、急変に備えてすぐにルート確保、動脈採血でガスも含めて確認します。BNPもしくはNT-proBNP、心逸脱酵素も併せて出しておきましょう。

急激な呼吸困難というとCS1心不全や肺静脈血栓塞栓症などが鑑別に挙がります。

身体診察、CXR、ECGをすぐに行います。CXRで肺うっ血、心拡大があれば心不全が疑われます。急性冠症候群による心不全の可能性もあります。エコーで大まかな心機能と弁膜症を確認します。

酸素投与、利尿薬、血管拡張薬

CS1心不全の診断がついたら、酸素投与に加えて、すぐにラシックスの投与を行います。

・ラシックス1A(20㎎)IV 

救急車で来るような苦しくて動けないような場合は尿量を把握するためにも尿カテを入れます。

・ニトロール3ml/h 持続静注

血管拡張薬で静脈系、動脈系を広げるます。これは単なる血圧低下を狙ったものではなく、静脈系を拡張させることで前負荷をとり、動脈系を拡張させることで後負荷をとって一回心拍出量を増加させるという機序があります。ニトロールをはじめとした硝酸薬は低用量で静脈系、高用量で動脈系を拡張させますが、頭痛や長期使用による耐性が問題となります。

ニコランジルを使用するのもよいでしょう。硝酸薬の働きで静脈系を拡張し、ATP感受性カリウムチャネル開口作用により動脈系を拡張させる効果もあります。ニトロールのように耐性を生じにくいというメリットがあります。

強いうっ血があればNPPV

酸素化が悪い場合、うっ血が強い場合はNPPV(非侵襲的陽圧換気)をためらわずに使用します。NPPVは血圧を下げることがあるため、血圧が低い症例では注意が必要です。

ひとまずCPAPモード、酸素濃度100%、PEEP 6 あたりに設定しておき、SpO2や患者さんのNPPVへの慣れを確認しながら適宜変更しましょう。吸気時、呼気時の両方の圧を調整できるBiPAPモードを使ってもよいですが、CO2が貯留していない症例ではCPAPのみで十分です。

 

初期治療が開始できたら、改めて心機能の評価や原因検索を行います。

CS1の初期対応はスピードが重要です。

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